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 現在は,情報があふれている時代ですが,情報をビジネスに生かすにはどのように収集すればよいのでしょうか。以下では,私なりの方法論を紹介します。

 私が利用する情報源は大きく11種類あります。(1)新聞(一般紙と専門紙),(2)インターネット検索,(3)メールで送られてくる技術情報,(4)専門家向けの無料雑誌,(5)専門家向けの有料雑誌,(6)学会誌,(7)専門書籍,(8)コンファレンス,セミナー,学会,(9)展示会,(10)調査会社のレポート,(11)アナリストや有識者との面談,です。

各種の媒体を使い分ける

 (1)新聞は,社会動向や技術動向を短時間で概観するために一番適した媒体です。新聞には多くの情報が掲載されていますが,最も効果的な利用法は,世の中でどのようなことが起こっており,話題になっているかをつかむことを第一の目的として読むことです。新聞によって論点が異なりますので,2紙以上を読むのが望ましいといえます。

 (2)インターネット検索は,今や欠かせない情報源です。定期的に閲覧するサイトを決めておき,定期的に見て内容の推移を頭に入れる方法が効果的です。

 (3)メールで送られてくる技術情報では,新聞よりも一歩突っ込んだ内容を概観できます。見出しを読み,必要だと思ったら,記載されているURLを閲覧して詳細を確認すればよいでしょう。

 (4)専門家向けの無料雑誌は,国内外に多く存在します。さまざまな最新技術が,タイムリに解説されています。昨今は毎日のように新技術が生まれる時代ですので,最も早く手に入るお金のかからない技術解説書として,有効に利用しましょう。

 (5)専門家向けの有料雑誌は,有料である分,無料雑誌に比べて内容は豊富といえます。日本で出版されている専門雑誌のほか,「Nature」や「Science」といった海外の専門誌でも,非常に内容の濃い情報が得られます。これらは,自分の専門分野に応じて自腹を切って利用すると良いと思います。

 (6)何らかの学会に自らの意思で参加することの意義は,学会組織を効果的に利用することにあります。学会誌は,学会をうまく利用するにはどうすればよいかを考える時に重要な媒体となります。

学会やセミナーで“生の情報”をつかむ

 (7)ここへ来て,基礎学問に立ち返って技術開発を進めることが重要になっています。半導体分野では,従来は“作ってみなければわからない”という発言が許されてきましたが,今後はそうはいきません。“ナノの世界”に入ったことで,原子レベルの挙動を理解してものづくりを進めなければ,世界に通用する製品は作れません。従って,半導体技術の理論的な根拠を理解するために,専門書籍を通じてメカニズムを知ることが非常に重要となっています。

 (8)コンファレンス,セミナー,学会は,発表者とのコミュニケーションを通じて“生の情報”を得る絶好の機会です。コンファレンス後のレセプション・パーティなども,人脈形成に大きな威力を発揮します。

 (9)展示会は,実際の製品に関する知識を得るために,非常に重要なイベントです。展示会を有効に活用するポイントは,自分が調べたい製品を絞って,説明員に徹底的に解説してもらうことです。多くの種類の製品をなんとなく見て,それなりの説明を受けただけでは,ほとんど得るものはありません。とにかく“選択と集中”を徹底するために,前準備をきちんと行うべきです。

コミュニケーション能力が必須

 (10)調査会社のレポートを有効に活用するためには,調査会社といかに付き合い,どのような形のレポートを作ってもらうかをよく考える必要があります。調査会社との付き合いは,すべて“ギブ・アンド・テイク”です。調査する内容の絞り込みや調査方法の指定,調査内容に関する見識を,購入する側が持っているかどうか。これによって,調査のコストと内容の充実度が決まります。

 さらに,調査会社からレポートを購入する場合,調査会社ごとの“癖”がありますから,2社以上から購買することが必須条件です。そして,調査レポートを踏まえての何らかの判断は,レポートを購入した側が下さなければなりません。このことは肝に銘じておくべきです。

 (11)ビジネスの観点からは,アナリストや有識者との面談を通じて得られる情報は貴重です。上記の(1)~(10)は,この作業を適切に行うための前準備といっても過言ではありません。面談で情報を得る場合には,コミュニケーション能力の優劣によって,得られる情報の量・質が決まります。そのコミュニケーションの要点を,七つにまとめました。

 (a)面談による情報収集の原則は,調査レポートの場合と同じく,ギブ・アンド・テイクです。相手と話をして情報を得るわけですから,こちらが提供できる情報がなければ,相手から情報を得ることはできません。ここでは,自分自身がいかに日頃から勉強しているかがポイントとなります。(b)面談に行く時には,目的を明確にし,アポイントメントを取り,目的を相手に伝えておくことが必須です。(c)面談時には,相手が話しやすい雰囲気を作り出さなければいけません。(d)相手から質問されて,現時点では話せない内容に関しては,「~の理由でお話できません」ときちんと伝えること。適当な返答は絶対に避けましょう。(e)面談は,相手との真剣勝負の場です。相手は,一度あなたに会って,もう会う必要がない人物だと判断したら,次からは会ってくれません。(f)面談から帰ったら,必ず相手に電話やメールでお礼をすること。(g)得られた人脈については,時々コンタクトを取ること。そうしないと相手に忘れられてしまいます。

情報は整理してこそ価値を生む

 情報は,整理されてはじめて利用できるものです。収集されっぱなしの情報は,単なる断片的なデータに過ぎません。従って,次のことは必ず実行して,“自分自身のデータベース”を作ってください。

 (i)雑誌は必ずファイルすること。(ii)新聞などは,重要な情報の切り抜きをすること。(iii)インターネットで得られた情報についても,重要な情報に関しては,必要な部分をパソコンに保存したり,ハードコピーをとったりして,必要な時に取り出せるようにすること。(iv)学会,セミナー,展示会,面談などに行ったときには,自分のための報告書を作成して保存すること。報告書を作成しておかなければ,せっかく情報を得ても後で使えません。(v)情報は,変化や推移を観察することで真実が見えてくることが多いことを念頭に整理すること。

 以上では,情報に対する私の姿勢を述べてきました。情報収集において最も重要なことは,「情報はタダではない」ことをしっかり認識することです。日本人は,情報に対するきちんとしたコスト意識を持たなければ,これからの国際競争には打ち勝っていけません。従って,情報収集のために自腹を切ることも必要です。また,現在は情報があふれていますから,“真の情報を見いだす目”を持つ必要があります。これは一朝一夕にできることではありません。地道に勉強し,試行錯誤を繰り返して自分自身のスタイルを作り上げ,それを磨いてゆくことが重要です。